忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ソレスタンの魔術師師弟のおはなし。

アマネ、ワタル、そしてふたりを繋ぐ、ひとりの魔女のお話。

拍手

アヴァロンに隠れ住む、黒い力を持つ魔女が人間の男に恋をした。
タケルという名のユニオンの重戦士は、誠実で、ぼんやりして、不器用で。
でも約束を破ることはなく、人を笑顔にすることが得意だった。
魔女は、名前と、人として彼と添い遂げる方法を手に入れた。
しかしその平穏は、あまりにも長い間他者を呪い続けた魔女が手にするには、重すぎたのだ。

魔女の名前は、トオコ。
黒い髪と、たれた目じりをなお下げて、困ったように笑う女だった。

ソレスタンの奥地で、知らず知らずゴブリンの巣に踏み入ったアマネを、間一髪救うトオコ。
「俺に魔法を教えてください!」
その力に感動したアマネは、思わずトオコに弟子入りを志願する。
ほんの気まぐれであったものの、トオコは快諾。
眠っていたアマネの素質を伸ばしていく。

家族もなく、毎日をスラムで生き抜いてきたアマネは
やがてトオコに恋心を抱くようになり、盗品ではなく手作りのプレゼントを贈ろうと決心する。
(このプレゼントが完成したとき、あなたに好きだと伝えるんだ)
しかしその時、すでにトオコの中には小さな命がやどっていた。
アマネはようやく完成した手作りのウサギのブローチを
「元気な子供が生まれますように、お祝いに…」と、無理に渡して立ち去る。
トオコはユニオンへ移住し、ふたりの交流はそれきりとなる。

失恋したアマネは荒れ、年上の女性の元を渡り歩くことになる。
しかしトオコから伝授された魔術を使うたびに彼女を思い出し、
ついに心から愛せる人を見つけることはなかった。
やがて成長し、充分な力をつけたアマネは無所属の魔術師として賞金首を狩り生活する。

一方、バルフォグへ渡ったトオコが出産すると、
まもなくタケルは息を引き取り、魔女の力を知るものからは執拗に付け狙われた。
「村の守り手である、彼が死んだのはアヴァロンの魔女のせいだ」と。
その魔力を恐れた村人からはつぶてを投げられ、日々の食料にもありつけず
魔女は衰弱し、幼いわが子を残して死んだ。
しかし魔女はいまわの際に、未来を見ていた。
「あの時の教え子が、この子を導いてくれるのだ」と。
すべてを悟った魔女は、もう誰かを妬むことなどなかった。

ワタルと名づけられた魔女の子、5歳。
魔女に育てられた賞金首狩り、雨霧の魔術師アマネ、19歳。
バルフォグの外れの小さな村で、魔女に縁あるふたりは出会う。

村長から魔物退治の依頼を受けていた彼は、報酬を受け取るために村に寄っていた。
湖のそばで座り込む、小さな子供。
「忌み子が!村から出ていけ!」
投げられた石を風で撃ち落とすアマネ。
「こんな小さな子どもに。ちっと大人気ねーんじゃねぇか?」
「おじさん、いいの。ぼくの母さん…ユニオンの人じゃない、特別なひとだったから」
「俺は19だぞ…おじさんじゃねぇ、お兄さんだ…」
子どもの胸元には。あの日渡した不細工なウサギのブローチ。
(まさか、それは)
不器用にみつめてくる子供の瞳は、かつて焦がれた、あのまなざしに似すぎていて。
「魔術師様、その子どもはアヴァロンの魔女の息子!なにをしでかすかわかりませんぞ!」
(魔女の息子が、忌み子だと?)
「悪ィな、俺もアヴァロン人だ!」
報酬なんていらない。かわりにこいつを貰う―と、子供をさらい姿を消す。
(悪役だって、憎まれたってなんでもいい。演じきってやる)

魔女の忌み子なんて、どこにもいないと。
生まれた国なんて、育ち方なんて関係ないと。
あなたの恋が、不幸なんかじゃなかったって俺が証明する。


それから、14年の時が流れる。

ソレスタンに隠れ住む師弟のもとに、ひとりの騎士団長が訪れる。
奇しくもそれは、ユニオンの騎士。

「俺はユニオンなんかの味方はしねぇ」
と、一度は団長の誘いを断るアマネ。
しかし団長が目をつけたのは、弟子であるワタルだった。
ステラ騎士団にスカウトされ、ユニオンを目指すと告げるワタル。
「あの村のやつらは!お前を村八分にしたんだぞ!」
「それでも俺は行こうと思います」
「あいつらの言うことなんか聞くことねぇ!」
「だから。なおさら行かなくちゃならない。アヴァロンとユニオン双方の血をひいた俺が、間違いじゃなかったと証明します」
アマネの目指した意志は、知らず知らずのうちに弟子へと受け継がれていたのだ。
何も言い返すことも出来ず、アマネはワタルを見送るしかなかった。

物語は加速する。

「トオコさん」
指輪に口づけ、ため息をつくアマネ
「俺はどうすればよかった?」


「どうしました?」
そして、ユニオンへ辿りついた魔法使いの弟子は、赤毛の少年と出会う。

季節は巡り、戦場と化し燃えるソレスタンの森。
叙任を受け、一人前の騎士となったワタルは戦場となった故郷を訪れる。

「師匠!」
呪いを受けたアマネは騎士団に保護され、
呪術を解かれた恩もありユニオンに所属し、ステラ騎士団の指南役となることに。


そして雨霧の魔術師は、最後の恋をする。

 

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © ステラノート : All rights reserved

「ステラノート」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]